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1月1日(祝)〜21日(月)
オープニング|12月31日(月)24:00|新年の中国茶会
会期延長|2月13日(水)〜25日(月)
トーマス・ボーレ
『ちび陶』
陶器
後援|オーストリア大使館/文化フォーラム
photo: Hideki Shiozawa
作品紹介:ソトコト
情報掲載:毎日新聞見るGallery|沿線リビングつくばエクスプレエス編|ぴあ展覧会ピックアップ、トピックス|
装苑|花時間|Eclat(エクラ)|CONFORT|月刊ギャラリー|朝日新聞マリオン
ex-chamber museumにてレビューを掲載していただいています >>
オーストリア人陶芸家のトーマス・ボーレは、アルプスを望むフォアアールベルク州ドルンビルンで制作活動を続けています。彼は、看護士から陶芸家に転向するという異色の経歴を持ちながらも、自身の造形スタイルをいち早く確立しました。
トーマス・ボーレの作り出す器の特徴はまず、そのフォルムにあります。極めてシャープなラインによって構成された器は、洗練されたバランスで成立し、近未来的な造形を描きます。器の表面には、情熱的な辰砂(しんしゃ)※の深紅や、氷のような透明感のセラドン※といった有機的な彩色が施され、釉薬の滴やヒビ割れをも活かして器の個性を豊かに表現しています。そして、異なる色彩と質感が調和した器の表面は、建築物のように空洞を包んでいます。器の内側にも外側にも空間を意識する彼ならではの「二重壁」の高度な技法が、手にしたときの意外な軽さを実現させ、「器を手にする」という慣れ親しんだ行為を、新鮮な驚きへと変えます。
トーマス・ボーレは、隙のない凛とした存在感を放つ器たちを、自然と人が一体となってゆるやかな時を刻むオーストリア西端の山間の街で制作しています。彼はこう語ります。
「すべてのモチーフは自然のなかにある。苔のむす樹木、朽ちてゆく落ち葉、泉から湧き出る清冽な水……。私はただ自然の情景を受け止め、器に置き換えているだけです」
固有のかたちを求めて真摯に技を極めながらも、時に大胆に陶芸の常識を超えてゆくトーマス・ボーレによって生み出されるその器は、洋の東西を問わず、高い評価を受けています。とりわけ、陶芸が現代的な芸術表現として認められづらいヨーロッパで、革新的なアートやプロダクトに贈られるバイエルン賞(ドイツ)を受賞したことは、特筆すべきことと言えます。
2008年1月1日から、トーマス・ボーレにとって日本における3度目の展覧会『ちび陶』が開催されます。アジア初となる個展『雅士 - ya shi』(2004年)、墨絵画家、張少俊とのエロスをテーマにした2人展『粉色閨房』(2006年)に続く本展では、「ちび陶」の愛称で親しまれる小型作品50点以上を展示販売します。
「ちび陶は大型作品の妹のような存在」と語るトーマス・ボーレは、直径1メートルを超える作品に挑む妥協なき技術を用いながらも、ちび陶たちを制作することをどこか楽しんでいるようです。彼は、ちび陶を制作するときの陶土の量を500グラムと決めています。型をいっさい使わず、同じ量の土から生まれる多彩なかたちと色の器たち。トーマス・ボーレの世界が凝縮されたちび陶には、性格の違う姉妹たちのように確固たる個性が込められているのです。
直径12センチほどのちび陶たちは、それを手にし、暮らしのなかで使う人々に、自由なインスピレーションを感じる時間を与えてくれることでしょう。
※辰砂、セラドン:どちらも器に彩色する釉薬の種類。辰砂は鮮やかな赤を発色するが、そのコントロールは極めて難しいと言われる。セラドンは淡い青緑色で、青磁の別称でもある。
ストーンウエア:トーマス・ボーレの器は「ストーンウエア」に分類されます。陶器と磁器の中間の焼き物で、原料に粘土と柔らかい陶石が使用されています。吸水性が少なく、陶器よりも堅いのがその特徴です。
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photo: Hideki Shiozawa
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photo: Hideki Shiozawa
ちび陶についてはこちら >>
トーマス・ボーレのサイトはこちら(独/英) >>
トーマス・ボーレ インタビュー(2004)はこちら >>
photo: Hideki Shiozawa
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トーマス・ボーレ(Thomas Bohle)プロフィール
1958年、オーストリア西端のフォアアールベルク州(Vorarlberg)ドルンビルン(Dornbirn)に生まれる。看護師として働いていたときに、友人に誘われ参加した陶器セミナーにおいて初めて土とろくろに出会い、以来その感覚のとりことなる。87年から様々な工房で経験を積み、91年には自身のアトリエ兼ギャラリーをドルンビルンに開き、以来、ヨーロッパ各地で展覧会開催、フェアなどに出展する。
2002年初めての来日、各地の窯元を見学。2004年、アジアで初の展覧会『雅士 - ya shi』をギャラリー・エフ(東京・浅草)で開催。同年7月には陶芸の母国、中国で展覧会『丹雅』(上海・半島芸術センター)を開催。世界の美術界が注目する上海芸術博覧会では、中国トップクラスの芸術家が組織する「半島芸術センター」のブースに3年連続で招待出展。2006年には、日本における2度目の展示となる『粉色閨房』(2006年/ギャラリー・エフ)が開催。墨絵画家、張少俊とのエロスをテーマにした2人展では、制作風景を記録した映像作品『pink』(監督:ゲルハルト・クロッカー)も紹介された。同年には、革新的な芸術作品やプロダクトに贈られるバイエルン州賞を受賞し、ヨーロッパでもアーティストとしての地位を確立する。
2007年には、中国人画家、陳亮とのコラボレーションも開始、陶芸によって東西の美をつなぐ試みも実現させる。近年は、ドイツ、フランス、イギリス、ベルギー、南アフリカ、韓国などでも作品が紹介されるなど国際的な評価が高まっている。 |
photo | Hideki Shiozawa