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3.10 10万人のことば
舞踊:鈴木一琥 映像/音声:カワチキララ

東京大空襲を生き延びた蔵で
「3月10日」を追体験する舞踊パフォーマンス

3月10日(土)14:00|19:00
追加公演21:30


写真:ダイトウノウケン 

 

「インタビューで分かったのは、亡くなった人と生き残った人の違いがないこと。『死ななかったのは偶然だった』と皆話す。だから聞き取った言葉は、死んだ十万人の気持ちだと感じる」

カワチキララ -----東京新聞(2005年3月9日)のインタビューより

「僕の体は先祖からつながっていて成立していて、たどっていけば空襲で亡くなった人ともつながっている。そういう人たちとの時間と出会う作業をしたい」

鈴木一琥 ------朝日新聞(2006年3月6日)のインタビューより

 1945年3月10日、午前零時8分。アメリカ軍による東京への空爆が開始されました。攻撃の対象となった地域は台東、墨田、江東にわたり、爆弾には木造建築を燃やすための焼夷弾が選ばれました。投下された爆弾の数は数十万発を数え、爆薬の量は1000トン以上に上ったと推計されています。被災した人々の多くは、女性、老人、子ども。家族を守るべき男性たちの多くは、戦地へと駆り出され不在でした。この一夜の空襲で死亡された方々の人数は10万人に及んだと言われています。
 後に「東京大空襲」と呼ばれることになるこの空爆は、第二次世界大戦において、日本が受けた攻撃では、広島と長崎への原子爆弾投下に続く規模の犠牲者を出しました。しかし、原子爆弾がその驚異的な威力のために世界的に使用を封印されている一方で、空爆は東京大空襲後も世界中で続いているのです。
 2005年3月10日、東京大空襲をテーマにした舞踊パフォーマンス『3.10 10万人のことば』が上演されました。この公演の企画者は、舞踊家の鈴木一琥とアーティストのカワチキララ。ともに30代のふたりは、60周年の節目の年に東京大空襲という歴史的な惨事によって亡くなられた方々を追悼し、そして空爆という非道な行為について考える機会を提示したいという想いからこの公演を企画しました。
 カワチキララは東京大空襲の被災者の方々にインタビューを重ね、その証言により空襲の夜を再現する音声作品を制作。鈴木一琥は、被災者たちに想いを馳せながら、舞踊を構成し、証言者たちの声をバックに肉体表現の限りを尽くして踊りました。会場に選ばれたギャラリー・エフは、江戸時代末に建立され、東京大空襲を生き延びた土蔵を再生した空間です。証言、舞踊、そして建物。これらの要素が融合し、東京大空襲という歴史的惨事を表現するパフォーマンスは実現しました。
 そして今年も3月10日が巡ってきます。再上演された2006年に引き続き、カワチキララは被災者に新たなるインタビューを行うとともに、音声作品を再構成。鈴木一琥は、『自分がどこまで被災者の方々の想いを代弁できているのか』を自身に問いかけながら、その日に向けて準備をしています。
 2007年3月10日、62年前の一夜を追体験する「3.10 10万人のことば」が上演されます。

情報掲載
毎日新聞|東京新聞|週刊金曜日

 

過去の公演より
2006.3.10
2005.3.10

鈴木一琥プロフィール
カワチキララプロフィール