2002.7.3
- 9.1
王超鷹 トンパ文字展
風流 風情
トンパ文字/篆刻/写真
チベット、インド、ミャンマーと国境を接する中国・雲南省には、
独自の風俗、文化、宗教を育んできた少数民族たちがいます。 そのひとつであるナシ族は、厳しい自然の支配する麗江県で生活しています。 山々を縫うように流れる幻の河、金沙江。
ヒマラヤ山脈へと続く、霧に包まれた王龍雪山。 眼下に揚子江を臨みながら、切り立った断崖絶壁の続く虎跳峡。 幻想的な風景が織りなす世界は、ナシ族に固有の死生観をもたらしました。
魂を響かせ合い、運命に導かれて最愛の伴侶に巡り会ったナシ族の男女は、
たがいに手を取り合いながら、母なる自然にその肉体を返すのです。 天国でも、地獄でもない、もうひとつの世界へ、自分たちの魂が旅立つと信じて。
王超鷹は、彼らの言語、トンパ文字によって、ナシ族たちの伝説を物語に綴りました。 王超鷹によるトンパ文字「風流 風情」展では、約6000字のトンパ文字によって綴った
物語の原画、そしてトンパ文字による篆刻を展示。また、写真家・馬放南による、 ナシ族の生活や雲南省の自然を記録した写真も同時展示します。
●王超鷹 プロフィール●
1958年中国上海生まれ。工芸職人の登竜門である上海美術工業中学を卒業後、工芸絵画部門に配属され、剪紙(切絵)を中心に工芸職人としての道を歩み始める。
1976年、弱冠18歳、史上最年少で中国全国工芸美術展に入選。79年、工芸美術設計師となる。とりわけ篆刻の技術は高く評価され、中国を訪問する政治家などの篆刻を数多く制作する。
1987年来日、武蔵野美術大学大学院修了(視覚デザイン学)。
92年、日本の商業デザインに感銘を受け、上海図書館で日本の商業ポスターに関する展示を開催。98年には、企業のCIデザイン、経営コンサルティングなどを手がけるPAOSNETを創業。
著書に『篆刻』『トンパ文字ポストカード エスニック』(ともにマール社)、『新型多効能家具』『日本現代広告芸術』(上海図書館)『世界CI選』(上海辞書出版社)など多数ある。96年、長年あたためてきたトンパ文字の研究を、「トンパ文字 生きているもう一つの象形文字」(マール社)で発表。日本における「トンパ文字ブーム」の先駆けとなった。
NHKテレビ「中国語会話テキスト」(2002年4月号〜6月号)の「当代上海老百姓列伝」にてその半生を紹介される。
●トンパ文字●
ナシ族の原始宗教であるトンパ教の祭司を「トンパ」と呼ぶ。 智者を意味するトンパたちが、経典を記すために使っていた文字、それがトンパ文字である。
7世紀に誕生したと言われるトンパ教。その文字も10世紀には誕生していたといわれる。 およそ1000年間にわたり、変化することなく存在してきた神秘の文字なのである。
トンパ文字の大きな特徴は、絵画性の高い絵文字を使用していること。文字の配列は、 基本的に左から右へと配置されていくが、ときに文章の上下にも配置されることがある。
文字には、書き手の個性が反映され、文章の解釈も読み手によって微妙に変化する。 絵心や感性、宗教観や教養によって生じる意味の変化を受け入れる寛容な文字である。
展示のメイン作品となったナシ族の物語『殉情物語』のタイトル。
●カフェ店内●
馬放南、張少俊、王超鷹による雲南省の風景写真。風にそよぐ旗をイメージして壁面に展示。 |
●ギャラリー1階●
王の友人である張少俊によるトンパ文字作品。ナシ族の神々が描かれている。 |
ナシ族の人々が織り、上海の子供たちがこの展示のために王と製作したカラフルなトンパ文字のタペストリー。 |
●ギャラリー2階●
ナシ族に伝わる愛と死生観の物語『殉情物語』の原画(王超鷹)37点を展示。観客はストーリーブックを手に物語を読み進める。ケース内は王超鷹によるトンパ文字のてんこく作品12点。 |
タペストリーに描かれた神々が会場に風(魂)を運ぶ。 |
金大偉
Music & Visual Live Show at BAR
7月7日(日)Stream
of The Wind -- 風流
9月1日(日)Feeling of The Wind -- 風情
王の友人であるアーティスト金大偉によるライブ・イベント。
ナシ族の生命力や雄大な自然の風景をイメージした楽曲と金がナシ族の村を訪れ録音したオルタナティブな歌声をミックスした音楽を世界初公開でライブ演奏。「ナシ族の歌声をデジタルでミックスし現代にアレンジすることで若い人たちにもナシ族やトンパ文字に興味を持つきっかけになれば」と語る金。夏の夜風に金の幻想的な映像が泳いだ。
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風流 風情によせて 王超鷹 風について
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