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日本での展覧会の後は、どのようなプロジェクトが予定されていますか? また、アーティストとしての活動において目指していることについて教えてくれますか?
今回の展覧会の後は、私的な環境と公共の環境の混乱について探る新しいプロジェクトに取り組みます。例えば、新しいテクノロジーが私たちの「プライバシー」を侵す脅威があるように思えると、そういったテクノロジーに異を唱える人々がいます。しかし、「プライバシー」という概念そのものは、さほど古いものではないのです。少々簡単な説明ですが、フランスでの現代的な意味においてのプライバシーの出現は、フランス革命が起きて人々が国王の所有物としての立場から自由になったことが例として挙げられます。私たちはどこまでを公にすることが大丈夫だと見なしているか、私たちが私的なものとして守りたいものが何か、テクノロジーが時代とともにこういった概念をどのように進化させ、その境界線がどこにあるか、といったことを探ることに興味があるのです。 2005年のテレコムイタリアのためのコンセプトデザインでも公共空間と私的空間をテーマにした。 もうひとつ私が温めているテーマは、移民と国境警備についてです。フランスでは、違法な移民に対して強硬的な立場を取る大統領が選出されました。大統領は、"sans-papiers"(フランス人であることを証明する書類を持たない人々)を捕まえ、もといた国へ送り帰すことに熱心な方です。私は今、こういった人々が社会を脅かす異邦人のグループとして見なされないように、個人的な物語を取り戻すことのできるシンプルな方法を発見することに取り組んでいます。もし私たちがあるグループからそれぞれの個人を識別し、その顔に名前を当てはめ、その人生の物語を理解できれば、少なくとも彼らを人間として扱うことができます。 私はただ、当たり前のことに挑戦し、その経験から何が生まれていくかを見ていきたい。私にはそれがアーティストとしての目的になるかどうかは分からないけれど、最高の出会いが生まれる、その途上にあることは確かです。
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