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2009年3月、東京大空襲記念日の直後から開催された展覧会『FROM ABOVE』において、長崎と東京合計17名のポートレイトを発表。会場となったのは、江戸時代から浅草に建ち、大空襲の猛火を耐えた土蔵を再生したアートスペースである。凛と立つ老人たちの肖像は、「あの日」から現在へと続く64年のそれぞれの人生を描き出し、大きな反響を呼ぶ。
帰国後サヴィアーノは、アメリカ在住の被爆者/被災者たちを各地に訪ねる。撮影に応じる被写体たちは口々に言う。「私に残された時間は少ない。急ぎなさい」サヴィアーノは彼らに出会い、フィルムと自分自身に記憶することを最優先事項とする。 2010年5月にはドイツ・ドレスデンに渡り、ドレスデン大空襲の被災者11名と出会う。被災者たちは、「個人」として彼らを訪れたサヴィアーノを歓迎した。終戦後もベルリンの壁の東側に閉じ込められていた人々は、歴史の背景として以外に語られることはなかった。1990年代まで、街のあちこちには建物の瓦礫が残されていた。「東京の空襲や長崎の原爆を生き抜いた人々の話を聞かせてほしい。体験を共有することが、私たちの癒しとなる」被災者たちはサヴィアーノに願った。
プロジェクトにおいてサヴィアーノは、写真家としてアメリカ人として注目されることを望まないが、被写体となる人々にとっては彼のコミュニケーション自体が、不幸な歴史と断絶を背負った両国の未来への、希望の架け橋となっていることも事実である。肩書きも組織もない、一人の人間としての身近さや親しみが、むしろプロジェクトに人々を巻き込み、前進させた。
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