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9月18日(金)〜10月4日(日)
ありがとう/TENKI
潮夢
写真によるインスタレーション

オープニング・パーティー|9月17日(木)19:00-21:00

12:00-21:00(最終日は19:00まで)
火曜休廊(9月22日のみ19:00までオープン
入場無料


(C) ありがとう

舞踊家浅井信好、フォトグラファー新井健太、デザイナー梅谷麻耶によるデザイナーズユニット『ありがとう』。その処女作となる『潮夢』は、自然の風景と対峙する浅井の肉体を、新井が写真として記録した作品である。
一切の無駄なく、過剰な装飾も意味付けもなく、太古の昔より「自ずから然るべく」そこに在る「自然」。唯一無二である存在の美しさと儚さが生む波動を通して、自然を見つめ、学び、守り、愛し、共生することの本質を問う。
会場となるのは浅草に江戸時代から建つ土蔵を再生したアートスペース、ギャラリー・エフ。空間デザインを手がけるクリエイター集団『TENKI』(スタイリスト三田真一、デザイナースズキタカユキ、ステインアーティスト土屋秋恆)を迎え、インスタレーションを創出する。

展示風景 photo | 新井健太

 

(C) ありがとう

浅井信好あさいのぶよし
NAGOYA DANCE DELIGHT、HIPHOP世界選手権(USA/LA)等のコンテストで優勝。それを機に渡米し『Alvin Ailey American Dance Theater』の作品に参加。
帰国後、商業演劇をはじめ、国内外のアーティストのバックダンサー及び振付けを手掛ける。主に浜崎あゆみ、SMAP、華原朋美、FLOW、気志團、奥田民生、マキシマム・ザ・ホルモン、BONNIE PINK、SOIL & "PIMP" SESSIONS、Paul McCartney、SCISSOR SISTERS等。
2003年より主宰カンパニー「踏流一派」で9カ国18都市の公演を行いシカゴ・トリビューン紙で『静寂の絵画を紡ぎだし、静寂の美に帰還するカンパニー』と評される。
2005年より一時活動の拠点を屋久島に移し、漁師になる。パフォーマンスユニットである群冗シキの作品「かぐやここのたりや」をハンガリージャパンフェスティバルにて発表。
2006年より山海塾に活動の拠点を移し、第6回朝日舞台芸術賞グランプリ受賞作品である「時のなかの時〜とき」をはじめ、「金柑少年」「降りくるもののなかで〜とばり」「UTUSHI」等の作品に参加。
近年では独舞「錦秋〜記憶の彼方の記録」がパリにて「若き舞踊家がこれほどまでに肉体を神事の域に到達させたことは驚愕に値する」と評される。
その他にも Vivienne Westwood Japan、Levis、LOUIS VUITTON、CHARRIOL等の国内外有名ブランドとのコラボレーションや土屋秋恆、三田真一、スズキタカユキ、TOWA TEI、故山口小夜子、新井健太等との革新的なセッションを行う。ドーハで開催されたアジアオリンピックに日本人ソリストダンサーの1人として参加するなど海外での活動が主になっている。
現在では21カ国80都市以上で公演を行う。
http://ameblo.jp/ninomae-dangan/
http://www.sankaijuku.com/


(C) ありがとう
新井健太あらいけんた
1980年、東京都出身
AbSurdite ディレクター、グラフィックアーティスト、フォトグラファー、詩人。
グラフィックデザイナーとしてファッションブランド GalaadenD に於いて4シーズン、グラフィックデザインとテキスタイルデザイン全般を手掛ける。
他に the tron の1stアルバム BIG WEDNRSDAY 80' sのアートディレクション、グラフィックデザインを担当。
また、フォトグラファーとして都内セレクトショップのファッションカタログやアーティスト、作家のポートレイト撮影などマルチに活躍。
2007A/Wより、クリエイティブ集団 AbSurdite に於ける T-SHIRTS プロジェクトを開始。
http://www.flickr.com/photos/araikenta/
  ありがとう
舞踊家 浅井信好、写真家 新井健太、デザイナー 梅谷麻耶、コラージュアーティスト 69からなるクリエイティブ集団。陰翳礼讃をモチーフとし、闇と光が螺旋のように交錯する美をテーマに作品を制作する。
過去の記憶を紡ぎだし、記録として作品を創造し、記録された作品を観た者はそこから多くのもの記憶する。
記憶とは生であり、記録とは死である。
記憶とは愛であり、記録とは愛である。
記憶と記録が求め合い、そこに humanity が誕生する。

(C) Artfit by TENKI

TENKI
スタイリスト三田真一、ステインアーティスト土屋秋恆、デザイナースズキタカユキからなるユニット。墨だけでなく絵の具、食材、油等を使い洋服に様々なステイン(シミ)を付け、スタイリング。ショーやプロモーションビデオだけでなく、インスタレーションとしての空間構成も得意とする。アートワークとしてのスタイリング、ファッションとしてのステイン、汚れと芸術、等様々なボーダーラインを追求しながら創作活動を展開。2007年より Outfit = 洋服と Art = 芸術の融合した言葉「Artfit アートフィット 」という新機軸を創りだし、クレジットを Artfit by TENKI に変え活動する。

 

潮夢 -- TEXT by ありがとう&TENKI

自然のありのままの姿を見て私たちはその美しさにため息をもらし、無限とも思える静寂の世界に心奪われる。そしてその美しさを作品として表現しようと試みるとき、そこには多くの壁が存在することに気づく。
それは自然に対する自分の意識や感覚と、他者の意識や感覚との差異であり、また、生物が本能的に感じる死の恐怖を輪廻というかたちで表現する難しさであるだろう。しかしながら死の恐怖をも取り込む輪廻のなかにこそ人間が潜在意識の中で感じている未知の世界があり、永遠のテーマがある。それらを形にすることが私たち表現者の課題であり、生涯をかけて表現するべき自然の本質なのだろう。

人は大いなる自然に対して敬意を持ち、観察し、取り込み、そこから多くを学んだ時にこそ、初めてその一部になることができ、そしてその壮大なる時間軸を肌で感じることができる。

自然の風景を極限まで省略した要素で構成した枯山水。人工的に造られたこの自然には、ある特殊な「美」が偶発的に発生している。枯山水を造る庭師は、訪れる客が「これはすばらしい石だ」と目をひくような「安易な美しさ」をあえて空間から取り去り、そぎ落とされた一見殺風景とも思える世界を作る。この簡略化された究極のミニマリズムの中には計算と偶発が共存し、個々の中にのみ存在するもう一つの時間軸を作り出している。少ない情報量のなかで五感を最大限に研ぎすましてこそ、初めて見えてくる美しさ。スキのない様式美をあえて壊し不完全な状態にしたときにこそ、それらはいちだんと崇高さを増し、見る側の想像力を借りて初めて完全な作品として生まれ変わる。個々それぞれに違う想像力を計算的に、またある意味偶発的に利用する侘びの美とは、自然そのものと対峙し続けたものにしか見えない境地であり、また同時に自己とも対峙し続けなければ見えない境地である。どちらも自らが自然を取り込み、自然の一部にならない限り生まれない作品であり、究極のネイチャーアートといえる。

私たちは展覧会『潮夢』で「存在自体の(自然な)美」を表現したいと考えている。
ギャラリー・エフが江戸時代から守り、育んできた静寂の美。
自然と人間の姿を風景の一部におさめた、たゆたいの美。
TENKIが表現する自然の儚さや脆さの中にある刹那的な美。

あるがままの姿を表現したこれら全てが一つの空間に共存することで、
そこには自然本来の姿が生まれるのではないだろうか。
まるで、それ自体が生命の縮図であるかのように。

浅井信好は骸骨に第一の皮膚を纏った人間に過ぎない。しかし、自然に対峙した自分は皮一枚だと思うほどの畏怖を抱きながらも、自身の奥深くに眠る三毒の焔を消すためにそれを取り込み、舞う。全てを自然にさらし、呼応する姿をまるで陽炎がようにたゆたうように表現する。その姿は新井健太によって撮影され、「記録」という第二の皮膚となり身体表現に纏うことで『潮夢』が生まれた。TENKIはそこで生まれた新しき美意識を「自ずから然からしむる」べく、ありのままに受け取り、衣服と植物による第三の皮膚として表現し全体を包み込む。
それら全てはギャラリー・エフが持つ「空」の概念、第四の皮膚として包括され、ひとつの然るべき流れとなる。

あくまでも人間は自然の一部である。
私たちは自然を纏い、その美しさを表現する旅を続ける。
その一部であり続けるために。


(C) ありがとう