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ギャラリー・エフ11周年企画展
4月25日(金)〜5月19日(月)

エリザベス・コップフ
air cigarette Tokyo Ideal
グラフィックアート

オープニング・レセプション|4月24日(木)19:00-21:00
パフォーマンス|Cherry Typhoon


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ミニレビュー掲載|Web Designing

古雑誌のインスタレーションにご協力いただきました!
谷中の古書ほうろうさん、浅草のきずな書房さん

 

 ウィーンを拠点にオーストリアのグラフィック・デザイン界の一線で活躍するエリザベス・コップフ。彼女は自身のアートを「アクション(行動)・デザイン」と呼ぶ。
 「正しく、ワイルドに、愛ある行動を、今(Do the right thing, do the wild thing, do your love thing now.)」のスローガン通りに、彼女がビジュアル・コミュニケーションを通して提示する行動は、人と人を結ぶコミュニケーションへの信念と愛情に満ちている。
 誰もが手を伸ばせば届くところに転がっている「愛ある行動」に目を向けるための仕掛けを、彼女は綿密にコンセプトの中に組み込む。自らのデザインとしての最終型をあえて設定せず、プロジェクトが人々の意志によって育つことのできる可能性を植え付けたまま、世の中に投げかける。結果、赤十字に寄付が集まったり、自宅の庭でオリンピックに参加できたり、CDだけでなくCDボックスまでが音楽を奏でたり、業績不振の会社が立ち直ったり、果ては対立してきた民族同士が手をつないだり。グラフィックとして紙の上だけに留まってはいないそれらの提案に巻き込まれた私たちは、「世界がこんな風であったら」と、いつの間にかポジティブな一歩を彼女とともに踏み出している。
 「エアシガレット」は、特に愛が必要なプロジェクト、とエリザベスは言う。2001年、アメリカで絶望的な喫煙規制と禁断症状に苦しんだ彼女は、タバコと同じサイズに切った1枚の紙を巻き、ひたすら空気を吸って口淋しさを紛らわした。丸めた紙と言えばそれまでのエアシガレットは、意外と効果があった。高校時代、哲学の教師が教室で語った言葉がよみがえった。「少女たちよ、タバコを吸うよりも、キスをしなさい」。持て余していた思春期の衝動は、けっして喫煙そのものへの欲望ではなかったことに思い当たった。代用品として生まれたエアシガレットは、デザインされることで、おちゃめで愛あるメッセージやストーリーを身にまとい始めた。以来、様々なコンセプトと媒体で1年に一作ずつを発表し、2007年までにシリーズは6作品を数える。
 2008年4月25日からギャラリー・エフで開催される日本での初個展において、エリザベス・コップフは新作「エアシガレット トーキョー・アイディアル(Tokyo Ideal)」を発表する。タバコを「吸う」というエロティックな側面を掘り下げ、人間が逃がれることのできない「欲望」を象徴する、ポルノグラフィックなエアシガレットにアプローチする。
 「ideal(理想)」の日本語発音が「愛である」と知り、タバコをくわえた彼女はまたにやりとする。

後援|オーストリア大使館/文化フォーラム

 


応急処置の啓蒙イラスト

 

音楽を奏でるCDケース、リトルオーケストラ


チャイナ・シック


バルセロナ・パフ

エアシガレットの歴史

 

 長年に渡りヘビースモーカーだったエリザベス・コップフは、2001年ニューヨーク出張の際、現地の厳しい喫煙規制と激しい禁断症状に彼女は追いつめられる。そうして生まれたのが、口寂しさを紛らわすための「エアシガレット ニューヨーク・シングル」である。

 

ニューヨーク・シングル

 

 自分自身を危機的状況から救うための応急処置としてデザインされたこの行為が、ポジティブな楽しみを増幅する効果をもたらすと気づいたコップフは、「エアシガレット」をプロジェクトとして発展させてゆく。
 中国のデザイン雑誌に20本入りパッケージのデザイン「チャイナ・シック」(2002)を、エアシガレットポスター「バルセロナ・パフ」(2003)をバルセロナのデザイン会議で発表。筆など持ったこともないのになぜか招待された中国での墨絵アートビエンナーレでは、5千本の手製「長寿エアシガレット」(2004)を作成。一本ずつを墨に浸して並べ、4メートルを超える一本の線を描いた。

 

長寿エアシガレット

 

 2005年の年明け、オーストリアの一流紙に「ストロング・ヴィエニーズ・エアシガレット」が折り込まれた。同時に、街頭の広告塔、ウェブサイトでのフリーダウンロードが展開され、エアシガレットで喫煙を止めて浮いたお金をオーストリア赤十字に寄付することを呼びかけた。
 その後も彼女の赤十字との協力関係は継続する。彼女のあらゆるデザインワークには、人々がいざというときに実践できない「応急処置」の紹介がイラストで組み込まれている。彼女のデザインは欲しいが応急処置は載せたくない、というクライアントには、赤十字への寄付が義務となる仕組みを確立した。
 現在までの最新作は、オーストリアがEU議長国となった2006年の「インスピレーション・エアシガレット」。EU加盟国それぞれの国旗がラベルになった25本のエアシガレット。付属の小さなブックレットには、20世紀を代表するタバコ会社のポスターが掲載されており、タバコ業界の喫煙へのビジュアル戦略をうかがうことができる。

 

ヨーロッパのためのインスピレーション・エアシガレット


ストロング・ヴィエニーズ・エアシガレット

 

 

 

ステファン・サグマイスター(グラフィックデザイナー/オーストリア、NY)
2001年 NY:中国のデザイン雑誌『Lighter』に寄せたテキスト

 流行の書体やフォトショップの新しいフィルターの使用が画期的としばし誤解されているこの業界において、私を心底興奮させるデザインにはますますお目にかからなくなっている。
 そんな中で、エリザベスがウィーン・アート・オーケストラのためにデザインした神秘的な濃い青のミュージック・ボックスは、私を完全に圧倒した数少ない作品の一つである。音楽を美しく包むだけではなく、音楽そのものを奏でる。その結果、こんなにも優雅に創り出されるデザインとコンテンツとの対話を、私はかつて経験した覚えがない。彼女はそれぞれ10曲ずつウィーン、アート、オーケストラに関する30の短い楽曲を委託した。それらは限定版のCDパッケージのひとつが開かれるとき、精密なハーモニカ・システムを通して奏でられるのである。ウィーン・アート・オーケストラの音楽家たちがこのパッケージを楽器として用いてライブ演奏を上演した。アートとデザイン、ひいては音楽と物体との間の境界線さえぼやかしてしまうコンセプチュアルなループ。これこそまさに画期的である。
 彼女は真剣で、ひたむきで、こだわりがあって、愉快で、知性的で、根性があり、確信に満ち、よきデザイナーとしての全ての質を備えている。しかし私が彼女に「最も誇りにしている実績は何か」と尋ねると、名誉ある受賞や特にすばらしくデザインされた作品のことではなく、息子のルークがいかに愛らしい少年に育っているかということを語るのである。
 彼女はまず第一に尊敬に値する人間であり、ほとんど重要ではないけれど敢えて言うならば真にすばらしいデザイナーである。そんな彼女を親友の一人に数えている私は最もしあわせな人間であり、そのおまけとして、かくも偉大な彼女の中のインスピレーションがデザイン・コミュニティーにもたらされることを喜ばしく思う。

Stefan Sagmeister
http://www.sagmeister.com/

 

エリザベス・コップフ プロフィール

1963年、オーストリア、フォアアールベルク州に生まれる。
生計を立てるため3年間タクシー運転手として働きながらウィーン大学にて心理学、歴史、哲学を学ぶ。
1989年から1991年まで香港で生活する。1993年に息子ルークを出産したことが、創造のすばらしさを知る初めての意識的経験となり、以来アイデアを突き詰め卓越したコンセプトを創造することに心魂を傾ける。
1989年より独学で写真を始める。1996年より独学でグラフィック・デザインとビジュアル・コンセプトを始める。1999年より『baustelle』という名でデザインスタジオを立ち上げる。
2004年よりウィーン応用美術大学大学院デザイン学科フォンス・ヒックマン教授のグラフィック・デザインクラスにて創造的コミュニケーションをテーマに教鞭を取る。
2006年、AGI(国際グラフィック連盟)のメンバーとして選出される。
現在ウィーン在住。
Do the right thing, do the wild thing, do your love thing now.

LINK: エリザベス・コップフ >>
LINK: エアシガレット >>

受賞歴ほか

2007

オーストリアのデザイナー連盟「デザイン・オーストリア」の80周年企画展示『Roadshow Austrian Design Future』でキュレーターを務める

2006

AGI(Alliance Graphique Internationale 国際グラフィック連盟)のメンバーとして選出される

『デザイン・アトラス』でオーストリアのトップデザイナーとして紹介される

オーストリアのデザイナー連盟「デザイン・オーストリア」の役員を務める(2008年まで)

2005

EU(欧州連合)議長国オーストリアで首相よりロゴデザインのコンテストに招待される

 

ローザンヌ(スイス)にてデザイン展『design2context』に出展

2004

第4回深?国際墨絵ビエンナーレ(中国広東省)にて「長寿エアシガレット」を出展

 

アメリカの製紙会社サッピ「idea that matters(大事なのはアイデア)賞」で「ストロング・ヴィエニーズ・エアシガレット」プロジェクトを実現

 

ヨセフ・ビンダー賞(オーストリア)受賞

 

ウィーン応用美術大学にて講師の職に就く

2003

バルセロナで開催された初の汎ヨーロッパデザイン会議「グラフィック・ヨーロッパ2003」にて新進デザイナーとして選出される

 

出版社ファイドン(本社ウィーン)から出版されたデザイン大全『AREAーグラフィックデザイン界のトップ著名人10人が選ぶ、世界で最も創造的な新生グラフィック・デザイナーの100の仕事』に掲載

2002

オーストリア・デザイン協会75周年記念にてデザイン講義

 

中国のデザイン雑誌『Lighter』にて紹介

 

モスクワのデザイン雑誌『Designer』にて紹介

2001

アート・ディレクターズ・クラブ・ニューヨーク80周年記念賞にて審査員

 

2000年度ウィーン市のベスト文化ポスターとしてグスタフ・クリムト賞受賞

 

ヨーロッパ地域年鑑『Print Magazine』にてオーストリアを代表するデザイナーとして紹介される

 

「コップフ&コルン」がヨーロッパデザイン年鑑『Print』にてオーストリアの貢献として紹介される

 

ヨーロッパ地域年鑑2001にて進行中の作品についてのレビューを公開

2000

ヨセフ・ビンダー賞(オーストリア)金賞と銅賞受賞

 

アート・ディレクターズ・クラブ・ニューヨークよりメリット・デザイン賞受賞

 

ヨーロッパデザイン年鑑にて優秀デザインとして認定される

1999

ヨーロッパデザイン年鑑にて優秀デザインとして認定される

1998

ヨーロッパデザイン年鑑にて優秀デザインとして認定される