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11月9日(金)〜26日(月)
イアン・イエーリ Ian Jehle
Here's to You
ポートレイト絵画


Susan Sontag


Donald Richie

 イアン・イエーリは、緻密な鉛筆画によって大型の人物ポートレイトを描くアメリカ人の画家です。そのモデルとなる人物は、彼の友人や仕事仲間といった、ごく身近な人々がほとんどです。彼は、ポートレイトを通じて、人物の個性を「他者の視点」によって明らかにしていきます。
 イエーリは、モデルとなる人物が撮影された複数の写真をもとに、ポートレイトを描いていきます。彼は、それぞれの写真で表現された異なる印象をまとめあげながら、その人物の持つ全体像をポートレイトとして完結させていきます。それは、私たちが実生活のなかで、人物のイメージを描いていくプロセスと同じと言えるでしょう。私たちは、一人の人間があわせ持つさまざまな印象を組み合わせながら、その人物の総合的なイメージを自分のなかに形づくっていくのです。
 イアン・イエーリにとって日本での初めての展覧会が11月9日より東京・浅草のギャラリー・エフで開催されます。展覧会のタイトルは『Here's to you』 。「あなたに幸あれ」という意味のこのタイトルには、彼自身が日本での展覧会を開くに至る道を拓いてくれた人々への謝辞の意味が込められています。
 本展覧会ではまず、二人の人物の大型ポートレイト絵画が展示されます。一人目は、アメリカ人映画評論家であり作家でもあるドナルド・リチーです。1953年に来日した彼は、小津安二郎作品をはじめとする日本映画や日本文化を欧米に紹介してきた人物です。二人目は、やはりアメリカ人の反体制文化のエッセイストであり、小説家であるスーザン・ソンタグ。彼女は、その作品のなかで、文化の枠を超えた芸術評論を展開した人物です。
 展覧会では、イエーリが日本に興味を抱くに至ったこの二人を軸に、ポートレイト作品が展開されていきます。リチーがアメリカに紹介した日本映画に登場する女優たち。リチーやソンタグに出会うきっかけを与えてくれた教師や友人。そして日本での展覧会を開催する出会いを提供してくれた人々。日本へと導いてくれた人々のポートレイト作品を描き、展示することで、イエーリは自身が歩んできた日本への長い旅の物語を綴っていきます。また、手書きによるガイドブックを制作し、登場する人物の略歴と、イエーリが日本にたどり着くためにどのような役割を果たしたかを紹介します。
 人物の内面を描くポートレイト絵画。それぞれに完結した作品を展示することでもう一つの物語を織りなしていく。ポートレイト絵画とその展示表現の新しいかたちを提示する、イアン・イエーリの展覧会『Here's to you』が始まります。

 


 

イアン・イエーリ(Ian Jehle)プロフィール

アメリカのワシントンDCを拠点に活動する画家。アメリカン大学で哲学を学んだ後に、美術の世界へ進み、同大学やブランダイス大学、コロンビア大学などの大学院で美術を専攻する。2002年よりアメリカの東海岸の都市で数多くの展覧会を開催してきた。また、2006年にはワシントンDC で芸術的な活動展開するDistrict of Columbia Arts Center(ワシントンDC)で講義も行った。

 

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