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2007年 8月3日(金)〜9月2日(日)
ジョエル・ビトン Joelle Bitton
ABSTRACT
映像インスタレーション|メディア・アート

Tokyo Art Beat レビュー(英)

dancer | Ikko Suzuki

 ジョエル・ビトンは、デジタルメディアを活用してインタラクティブなインスタレーション作品を展開するフランス人アーティストです。パリのソルボンヌ大学で歴史学や地政学を学んだ後に、マルチメディアの世界へと足を踏み入れた彼女は、アーティストとして欧米各国で展覧会やイベントを開催するとともに、博物館や学術的な研究所でさまざまなプロジェクトに携わってきました。
 ビトンは先端のデジタル技術を活用しつつも、常に文化や人の相互理解といった有機的なコミュニケーションをテーマに置きながら作品やプロジェクトを実現してきました。
 例えば、『RAW』(2002〜2004年)という作品では、アフリカのマリ共和国の人々の協力を得て、現地の人々にウェブカメラを渡し、彼ら自身が撮影する日常生活の映像と音声をリアルタイムで世界に配信するプロジェクトを実現。第三者によって編集されないマリ共和国の「生」(raw)の情報を共有することで、真の文化理解を図るという試みを行いました。
 また、『passages』(2002〜2005年)では、数百キロ離れた2カ所の会場に真っ白なスクリーンを設置。偶然通りかかった人どうしが、スクリーンに映し出された互いの影を通じてコミュニケーションを育むというインスタレーションを制作しました。
 2006年に来日し、日本文化に触れたジョエル・ビトンは、日本文化の持つさまざまな要素を「日本庭園」に見出し、「ABSTRACT」というインスタレーション作品の着想を得ました。
「日本庭園は美と哲学の世界。美意識、精神性、そして遊び心がちりばめられた庭園の世界をインタラクティブな体験のなかで捉えてみたかった」
 会場は、戦災や都市開発を奇跡的に生き残った江戸時代末建立の土蔵です。
 約140年の歳月が醸し出す土蔵の濃密な空気感。体験者に呼応して現れる日本庭園の四季の映像。そして、空間を包むように響き合う音色。ジョエル・ビトンは、観る者自身がインタラクティブに、庭園と土蔵という極めて日本的なふたつの世界をつなぐインスタレーションを制作します。
 2007年夏、都会の喧噪の中でひっそりとたたずむ土蔵に、空間と映像、そして音が織りなす「幻の庭園」が現れます。

 


 

展示空間のなかで味わう「樗」のお甘(300円)とお茶
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樗(OUCHI)とは、2005年まで台東区東上野の一軒家で味わうことのできた季節の食卓です。現在ではネットショップを中心に、丁寧に向き合う「食」の提案を続けています。


協賛

後援|フランス大使館文化部|フランス文化省


 

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ex-chamber museum にてレビューを掲載していただいています >>

情報掲載:月刊ギャラリー|読売新聞シティライフ|東京メトロ沿線だより|beauty woo|METROPOLIS

 


 

ジョエル・ビトン Joelle Bitton プロフィール

1974年、フランス・パリ生まれ。パリのソルボンヌ大学で歴史学、地政学を学んだ後に、マルチメディアの道に進み、2000年にはFine Arts School of Paris and Telecommunications School of Parisでマルチメディアとハイパーメディアについて学ぶ。同年には、インタラクティブ・メディアアートのプラットフフォームサイトwww.superficiel.orgを共同で立ち上げるとともに、精力的に作品を制作、発表していく。フリーランスのマルチメディア・クリエイターとして、国境を越えた活動を展開し、主に博物館や文化的な研究所などで、ウエブサイトや展示、CD-ROM、PDAなどさまざまメディアを活用して文化やコミュニケーション、調査、教育などについてのプロジェクトに携わってきた。パリのポンピドゥ・センターを始め、カナダ、アメリカ、アイルランド、オランダ、マリ共和国など各国で展覧会を開催するとともに、マルチメディアを駆使したイベントをヨーロッパ各国で開催してきた。現在、パリ在住。

http://www.superficiel.org/joelle

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