アダム・ブースは日本を活動の拠点に置くイギリス人の日本画家です。彼は、南米やアフリカ、アジアなど世界の美術を研究するなかで日本美術と出逢い、そのシンプルさに魅了されました。2001年に来日、東京藝術大学に籍を置きながら、日本文化について学び始めます。日本画を自らの表現手段として選び、伝統的な技法を真摯に学んだ彼は、俵屋宗達をはじめとする日本画家たちの影響を受けつつ、日本や中国の民話・神話、南米やアフリカ、チベットといった世界各地の芸術から得た着想を凝縮し、異文化のモチーフを混在させることで、自身の世界観を構築してきたのです。
高い画力と独創的な世界観を持つアダム・ブースが主なモチーフとしているのは、桃と白象、そして珍奇な鳥たちです。
アジアの文化では、桃は長寿のシンボルであるとともに、人間の欲望の象徴であるとされていますが、その欲望は神に禁じられています。ブースの作品に描かれている桃は、空から落ちては浮かび、時には燃えます。彼は、桃を人間の叶わぬ欲望、手の届かない希望として描いているのです。白象は、さまざまな大きさに形や姿を変え、浮かび上がります。白象の姿を変化させることにより、真実と現実に対する疑問を提示するのです。そして、珍奇な鳥たちは、桃と白象のあいだに存在することで、緊張感を引き立てます。
アジアの美術史を通じて、鳥と象は吉兆の象徴として描かれてきましたが、アダム・ブースの作品では、疑惑も提示しています。絵の矛盾によって物事の関係性が変化し、桃に対する鳥と象の「意図」について考えることを観る者に誘うのです。
アダム・ブースは、3月16日から4月15日にかけて開かれる展覧会に『Eternal Spring』(永遠の春)というタイトルを付けました。彼は、こう問いかけます。
「神話の桃源郷のような、平和的な理想国を表現したいと考えこのタイトルを付けました。『永遠の春』の国は、我々の理想的な象徴のまま、桃と同じように手に入らないものなのでしょうか。それとも私たちの力で世の中を平和な『永遠の春』へと変えてゆくことができるのでしょうか」
桜の咲き乱れる季節、東京・浅草にある江戸時代末建立の土蔵を再生したアートスペースに、春の象徴としての桜を取り入れた新作など描き下ろしの12点によって、アダム・ブースの「永遠の春」の世界が現れます。
アダム・ブース プロフィール
情報掲載:
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TABにアダム・ブースのインタビューが掲載されています。(英文のみ) |